マンション購入時の注意点|「機械式駐車場」は負の資産に!?
マンションは、その大半が「共有資産」となっています。ゆえに、自分が利用しないからといっても、マンション内要素の管理費・メンテナンス費用を負担することとなります。
そういう意味で「機械式駐車場」は、マンションの「負の資産」となるかもしれない要素なのです。
そんな「機械式駐車場」のことをきちんと理解しておくことも、マンション選びをする上で大切なポイントとなるものです。
目次
「中規模・大規模マンション」に設置されている機械式立体駐車場の課題
自動車は、「物流など」を支える社会の根幹的な仕組みを担っています。一般家庭においても、車は大きな役割を担う要素として、「一家に一台の保有」が目安となっていました。
ゆえに、マンション計画を行う時には、「住戸数と同じ数の駐車スペースの確保(100%の駐車スペース率)」が基本的な設計基準となっています。(実際は、各自治体や計画状況により、様々な基準値が設定されています。)
都心部のマンションにて生じている「機械式立体駐車場」利用者の減少
日本の人口が減少傾向へと転じて以降、社会的傾向(消費傾向)のひとつとして、取り上げられるようになってきたのが、都心部生活者の「自動車(自家用車)離れ」です。
ここで誤解の無いようにしていただきたいのが、「自動車離れ」という現象は、あくまでも都心部生活者を対象とした要素であって、地方都市や農村部を含んだ全国的な出来事では無いということ。
実際、国内の自動車(自家用車)保有率は、右肩上がりの増加傾向が続いています。(近年、増加率は緩やかとなっていますが、自動車利用者は減ってはいません。)
ですから、対象となるのは「都心部」となりますが、近年、機械式立体駐車場利用者が減少。中規模・大規模マンションの機械式立体駐車場運営管理に大きな課題が多々生じて来ているのです。
今回、そんな課題の中から、取り上げておきたいのが「機械式立体駐車場の維持管理」の課題です。
効果的・効率的な維持管理の必要性
都心部での中規模・大規模マンションでは、敷地にゆとりがないため、「平置き駐車場」の数は少なく、「機械式立体駐車場」が多く建設される傾向にありました。
しかし、近年マンション居住者の「自動車保有率」が減少。多くのマンションで駐車場利用者数が年々減少傾向となっています。
真っ先に、駐車場契約が解約されるのが「機械式駐車場」なのです。
「平置き駐車場」と比較して、「機械式立体駐車場」は利用者にとっても、不便を感じる要素が多いもの。はっきり言って、利用者の立場としては「平置き駐車場」よりも優れていると言える要素はひとつもありませんからね。
ここで、問題が顕在化したのが、「機械式立体駐車場の維持管理」の課題です。
全ての機械式駐車スペースが利用されている時には、単純に「駐車場代」を維持管理費用に充てれば良いので、あまり問題視されることが無かったのですが。
機械式駐車スペースの「空き」が増加することによって、従来のスキーム(維持管理方法)が通用しなくなったのです。
極端な話、機械式駐車スペースが50%の利用率となってしまった場合、「一か所の駐車場代」にて「二か所の駐車スペースの維持管理」を行う必要が生じることに。
この状態では、現実的な維持管理は出来ませんので、抜本的な「維持管理方法の見直し」が必要となります。
現在、都心部の「機械式駐車場」を多数抱えているマンションの管理組合の多くが、効果的・効率的な維持管理の必要性に迫られているのです。
国土交通省による「機械式立体駐車場の維持管理指針」の策定
「機械式立体駐車場の維持管理」に関する様々な課題が噴出する状況にて、ようやく、2018年7月、国土交通省によって「機械式立体駐車場の維持管理指針」が策定されることとなりました。
このニュースを聞いて、逆に驚いたのが、「今まで、機械式立体駐車場の維持管理に関する指針がまったく無かった」ということです。
多くのビルオーナーやマンション管理組合が「機械式駐車場の維持管理の基準や方法など」を知らずに運用してきたこととなりますからね。
これからが本当の意味での「機械式駐車場の維持管理」が成されていくものと思っています。
管理者や設置者など立場ごとに果たすべき役割を明示
まず、今回策定された「機械式立体駐車場の維持管理指針」の根幹をなしているのが、管理者や設置者など立場ごとに果たすべき役割を明示したことです。
「役割」が明示されることは、例えば「機械式駐車場」を運用している上で、「どんな責任や義務」があるのかといったことを意識するための大きな原動力となるもの。
「機械式立体駐車場に関連した事故」などは、絶えることなく、毎年生じている出来事であり、そのような事故を防ぐための「危機管理」なども機械式駐車場の管理者(マンション管理組合など)にあることが示されています。
施設の種類に応じた標準的な点検項目や点検頻度の紹介
「指針」に示されている、もうひとつの大切な要素が「施設の種類に応じた標準的な点検項目や点検頻度が紹介されている」ことです。
●適切な知識や技術力を持った保守点検業者をどのように選定すればよいか。
●保守点検の業務内容や責任範囲を契約上どう明確にするか。
●不具合情報などを把握し、確実に保守点検業者に引き継ぐための仕組みをどうするべきか。
など、「管理者や設置者など立場ごとに果たすべき役割や実施すべき取り組み事項」「保守点検業者の選定留意事項」「保守点検契約に盛り込むべきチェックリスト事項」などが列挙されています。
このように、施設の種類に応じた標準的な点検項目や点検頻度が一覧にて参考情報として、表されていますので、専門知識のない、ビルオーナーや管理組合でも適切に保守点検が行えるようになっていくことが期待されます。
マンション購入者にとっても、「機械式駐車場の有無」「管理方法」は重要な見極め要素に。
「自分は車を所有していないから、関係ない」と思う方も少なくないのかもしれませんが、「機械式立体駐車場の課題」は、車を保有していない人にこそ、大きな負担として伸し掛かる可能性があるのです。
ゆえに、「マンションの購入」を検討する時に、「機械式駐車場の有無」「機械式駐車場の管理方法」などは、全ての人にとって、とても大切な検証要素となります。
「機械式駐車場の維持管理費用」は、「駐車場代」だけでは、費用不足となってしまい、結局は、マンション居住者から集めた「維持管理代」の中から、支払われるケースが少なくないからです。
「機械式駐車場の課題」は、機械式駐車場を有するマンションの全ての居住者の課題なのです。
車を所有していないのであれば、「機械式駐車場の無いマンション」を選んだ方が良いものと考えています。
今後、期待されるマンションの機械式駐車場に関する法的整備
「オフィスビル」や「商業施設」などと比較して、「住宅用途」となる「マンション(共同住宅)」においては、機械式立体駐車場に対する規制内容が異なっています。
特に、大きな違いとなっているのが、マンションの場合、保有している駐車場は、マンション居住者のみにしか貸し出すことが出来ない状況となっていることです。
「マンション駐車スペースの空き問題」及び「機械式駐車場の維持管理費問題」を解決するための方策の一つとして、居住者以外への駐車スペースの貸し出しが効果的と考えられています。
実際、近年、特殊な状況下にて、「マンション駐車場の貸し出し」が認められるようなケースも出てきています。
複数の異なる法規制が関連している要素ということもあり、簡単には、成し得ないことではありますが、今後、全てのマンションにおいて、保有する駐車場がマンション居住者以外に貸し出すことが可能となるような法的整備が行われていくことが期待されます。
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